オタクが「ヒットの崩壊」を読んだ

 

ファンがお金を払って手に入れたのは「音楽」でも「特典」でもなく、いわば見返りのない「願い」が10万枚近いCDの形として買われた、というわけなのである。

 

「ヒットの崩壊」 柴那典 講談社現代新書(2016)74ページより

 

 

まさにこの通りだと思うけど、お金を出している以上”見返りのない「願い」”というほど綺麗な感情だけで買っているわけではないよな、とトリプルミリオンに向けたラストスパートかけないとやばいよ、というツイートを見て思う。それこそ純粋な願いだけなら毎日お祈りするだけなわけで。そんな夢みたいなことが起こると思ってる少女みたいなオタクがほぼいないのはSMAPの25年というキャリアから目に見えてる(事務所の対応はこちらをまだまだそんなお花畑オタクだと思ってるみたいだけど)。そうしてるだけじゃなにも起こらない、何か事態を動かしたい、なにかのこしてあげたい。会議室をラジオの仕事のために貸してくれたり長年SMAPを支えてくれたビクターへの恩返し、トリプルミリオンをSMAPにあげたい、歴史に爪痕を残させたいっていうもっと具体的で生々しい直接的な願望がこもってる、「執念」に近いモノだと感じている。

 

 

 

 

正直、読むまでは「どうせ人に手にとってもらうためにオビに(きっと担当者が)ねじこんだだけでしょ?」と思っていた。でも世界に一つだけの花を購買運動としてシンプルに他になんの余計な問題も取り上げずにそこだけにフォーカスしていたのがありがたかったし、さらに(P103)中居正広司会「音楽の日」が初めての大型長時間音楽番組としてその始まりの経緯も書かれていて、この本を手に取る人に広まる良い機会だと思った。

(中略)震災後にはテレビのバラエティ番組やエンタメ全般の自粛ムードもあった。その一方で、震災後には多くのアーティストたちがいち早く復興支援の活動に乗り出していた。その中で大きな存在感を示したグループがSMAPだった。

 「ヒットの崩壊」 柴那典 講談社現代新書(2016)104ページより

 

 

あと、ビルボードの集計やオリコンの話が書かれていてジャニオタとして勉強になった。

と同時に、ビルボードみたいにTwitterやインポート数やら加味した複合的なチャート作りの取り組んでいる記述を読んで、オタクが”CDタイトルとアーティスト名を正式名称でつぶやこう”というツイートをしていたのもよく見かけるのを思いだす。ランキングである以上オタクというのは応援しているグループになるべく1位をとらせてあげたいと努力せずにはいられないんだなと思った。どんな集計方法だろうときっとどこからでもオタクは食らいついていくんだろうな。

 

「ヒットの崩壊」、複数のアーティストやプロデューサーに取材してて読み応えのある本だった。同じジャンルの本でスマオタ的にさらにエモさを感じられるのは宇野維正さんの「1998年の宇多田ヒカル」、こっちは新書なのに読んだときなぜか涙でた。こちらも併せてオススメしたい。

 

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